ロータリーの奉仕 
 「ロータリーの歴史探訪(田中 毅氏著)」に1905 年にポール・ハリス氏らによってロータリークラブが創立された翌年に、ドナルド・カーター氏事件が起ったことが記されています。ドナルド・カーター氏に「物質的互恵」の特典を説明して、シカゴ・クラブへの入会を薦めたとき、自分たちだけの利益にこだわって、社会的に何もしない団体に将来性も魅力もない。会員以外の人々に、何か利益になるようなことをするならば、そのようなクラブは大きな将来性を持っています。あなたのクラブは何らかの市民に対する奉仕をすべきだと思います」と述べ、入会を断ったのです。このことを機に、ロータリークラブに奉仕の理念が醸成されてゆきました。

 ロータリーは奉仕を目的にしたクラブであるということを、私が葉山ロータリークラブに入会してからこの方、ずっと聞いてきました。しかし、私はロータリーの奉仕について一つの疑問を持ち続けていました。その疑問とは、「ロータリーの奉仕は慈善ではないか」ということです。「慈善」は、辞書では「他人に対して情けや哀れみをかけること。恵まれない人々に経済的・物理的な援助をすること」となっています。そして、そのように感じられる奉仕活動もあったように思います。私の疑問は、慈善はそれを受ける社会に何か価値を生んでいるかということでした。今年度会長として、奉仕活動に責任を持たねばならない立場として、ロータリーの奉仕活動に疑問を持つことは許されないと思っておりましたが、2011 年にマイケル・ポーター氏が提唱した「共通価値の創造(Creating Shared Value)」という論文(Harvard Business Review. 2011; 89: 62)を最近知り、少し思いが変わりました。この中に、「共通価値の原則は、社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。」と書かれています。「共通価値の創造」をロータリーの奉仕の視点で考えてみますと、真っ先に思いつくのが「4つのテスト」です。これは、ハーバート・テイラー氏が倒産寸前の会社の再建にあたって、社員の人格と信頼、さらに奉仕の心を育てるための倫理上の尺度として作られたもので、これを実践することにより見事会社再建に成功しました。「みんなに公平か」、結果「好意と友情を深める」ことがうたわれていますが、相手が求める価値を提供し、その結果、自分にも価値が得られたことは、まさに「共通価値の創造」ではないかと考えています。今後、奉仕活動を実践し、また新たに開発してゆくにあたって、「共通価値の創造」を一つの判断基準にしたいと思っています。

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